今から15年位前の事ですが、その当時は、東北は岩手県への出張が多かったです。
ちょうど朝早くからの大きなプロジェクトの打ち合わせがあって、急遽前のりしてホテルに宿泊する事になりました。
この案件はけっこう利益的にも大きかったから逃したくなく、技術課長の俺と、管理部長で出向くことになりました。
それで、総務で宿泊するホテルと取ってもらいましたが、駅近郊のホテルの部屋が空いてなくて、ツインひと部屋をなんとか確保しました。
それで、俺は部長と泊まるのは今一乗り気がしませんでしたが、仕方なく承諾して、そのホテルを目指しました。
ホテルに到着して、ひと部屋しかやはり空いてなかったのですが、別々に泊まりたいので、他に部屋は無いの?と、ダメもとで聞いてみたんです。
すると、すぐに返事が返ってきて、ありますよそちらはシングルですが、ツインとシングルのお部屋2部屋でよろしければ…と言われた。
なんだ、そういう訳で二部屋確保できなかったのね?…と俺は勝手に解釈した。
それで、そのツインの方は部長に、シングルの方は俺が泊まる事になった。
それが、面白い事に、俺の部屋の隣が部長の部屋だった。
その晩は、夜は近郊の居酒屋で、明日の打ち合わせの話で、こちらの作戦など意識合わせをして、後は会社の愚痴を言い合って、打ち合わせ前なのに、けっこう呑んだと思う。
とりあえず、明日の事もあるからと、その日のうちにホテルに帰った。
まずは、ホテルに戻ってすぐのことだった。
部屋は昔のキーを指す場所があって、そこにキーのホルダー部分を指すと部屋の電気がつく。
行く前は確かに電気がついたが、同じことをしてるのに、電気がつかない。
何回かやったが駄目だったので、フロントに電話しようとしたら、なんとぼんやりと明るくなって、ようやく電気がついた。
この辺で、なんか変だなと思えばよかったが、ちょっと酔ってたので、とりあえず服を脱いで、シャワーを浴びて寝ようと思った。
それからシャワーを浴びてると、なんだか外に、と言うか、部屋の中だったのだと思う。
子供の笑い声と、走る足音が聞こえてきた。
気のせいかなと思って、シャワーの扉を開けてみたが、誰もいない。
ま、これも気のせいだろうと、シャワーを浴びてから、喉が渇いたので、廊下に自動販売機があったので、そこに飲み物を買いに行った。
廊下は薄暗く、なんか嫌な雰囲気だったが、早く買って戻ろうと思って販売機を目指した。
すると、その販売機の前に、誰が立っている。
廊下が薄暗くて、販売機の明かりがこうこうとしてるので、逆光だったから影だけ見えてる感じだった。
近づくと、小学生くらいの女の子2人が立っていて、早口で何やら話をしてた。
その時は平日だし、ああ、修学旅行か何かかな?と思った。
その女の子達が俺の脇を通り過ぎた瞬間、後ろから声を掛けられた。
呑みすぎたな~。
部長だった。
あ、今ここに女の子いてさ…と俺が言うと、何言ってんだ、飲みすぎなんだよお前も。と、女の子達の事はスルー。
なんだろう、部長もけっこう酔っぱらってんなと思って、そのままそこでおやすみと別れた。
俺は部屋に戻ってから、自分で持ってきた目覚まし時計を出してきてセットした。
これは癖で、スマホを持ってはいたが、目覚まし時計が安心だったから。
電気を消して暫くしてから、なんだか騒がしく起きたのだが、目覚まし時計が鳴っていた。
見ると、午前2時だった。
起きる時間はいつも6時半にセットしてるので、それをいじることはほとんどないし、確かに時計を確認したし…
ま、酔ってたからかと、時計を頭の後ろの台に置いて、再び寝ようと思ったら、俺の部屋の扉を、ドン!と叩かれた。
え?
俺はちょっと驚いて扉の方に行くと、女の子の笑い声が聞こえてる。
あー、眠れないから騒いでるんだな…と思って、どんな状況なのか見ようと、扉を開けて廊下を見たが、誰もいない。
おかしいな、すぐ開けたのに…
それから、また寝床に入って今度は爆睡したのだが…
うっすら明るくなってきた明け方、たぶん5時前くらいに、いきなり子供の笑い声が耳元で聞こえ、びっくりして体を起こした。
誰も居ない、静かな雰囲気。
ゾッとしたが、兎に角少し寝ないと…と、そっちが優先で。
それからうとうとして、6時半に目覚まし時計が鳴ったので、それを止めようと枕の後ろの台に手を伸ばしたのだが、なんと、時計が勝手に移動して、ベッドの後ろの机の上に乗っていた。
なんじゃこれは…
べつに、そこまで酔っぱらってはいないのに…
そのまま6時半過ぎに起きて、朝食を食べていると部長がやってきた。
朝の挨拶をしてから、昨日の女の子達、夜中もさわいでたね…と言うと、何のこと?
自動販売機?ああ、あの時ね。
そんな子供見なかったよ。
平日に子供がこんなビジネスホテルにいるわけないだろう?
それでホテルを出るときに、俺は恐る恐る、フロントの人に、子供の修学旅行とか、そういうので子供が泊まってますか?と聞くと、いえ、お泊りにはなっておりません…
そう言われた。
何かフロントの人も、ばつが悪そうにしてる気がしたが、気のせいだろうが…(笑)
なんとも言えない体験だった。